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食のフレキシビリティにつながる活動

医療×化学技術×フレンチ×様々なハンディキャップ

個々に対して柔軟(フレキシブル)に対応する環境づくり

デコボコや障害をなくすことを「バリアフリー」と呼びますが、設備として段差をゼロにしたり、身体的なハンディや各々の違いを物理的に完全になくすのは不可能です。
各々の違いやデコボコ、つまりバリアはあって当たり前。なので、あえてバリアフリーとは言いません。
むしろ、バリアという垣根を作っているのは、私たちの心。
もしデコボコの中で、不便なことがあれば、周囲の人のちょっとしたお手伝いで助かったり、思い込みによる過度な遠慮やお節介がかえって壁を作ってしまったり。
ハンディはバリアではなく「個性」として知り、接することで、おのずと垣根は取れ、ハンディを持つ人の窮屈な思いを減らせます。
何もかもフラットに均一化でバリアをなくすだけではなく、様々な人の「個性」に柔軟に対応できる食事と環境を目指しています。

様々なハンディキャップを持つ方々のお食事会では、嚥下食だけでなく、管理栄養士に指導を依頼し、透析食にも対応
飲み込みや咀嚼(そしゃく)といった嚥下(えんげ)機能の段階に合わせて、とろみなどを調整する嚥下食。チームで研究を重ね、特殊な技術で食物の繊維は潰さない上に、健常者が食べても違和感のないおいしさを実現

 

活動内容

  • 2013年より 鶴見大学ボランティアチーム「 Yokohamaで学びーば」の歯科医やイーエヌ大塚製薬「あいーと」事業部とタッグを組み、摂食嚥下障害食の開発スタート
  • 「第3回嚥下食メニューコンテスト2015」(日本医療福祉セントラルキッチン協会主催)入賞
  • 2016年より HANZOYAにて嚥下食メニューを提供開始
  • 2017年より 「三鷹の嚥下と栄養を考える会」に参加、フレンチシェフの見識からアドバイスやセミナー講師
  • 2017年 嚥下フレンチを「スラージュ」と命名、新作メニューを医療関係者や介護従事者に発表。HANZOYAでも提供中
  • サービス面でも心理的な垣根をなくし、適切な対応を目指し、専門家や様々な障害を持つ方と共に勉強会を実施中

 

歯科医との出会いから嚥下食の開発へ

被災地支援の活動の中、鶴見大学のボランティアチーム「 Yokohamaで学びーば」の歯科医と出会い、口腔ケアの経験から「フランス料理は嚥下食に適している」との話を聞く。
その後、あるときイーエヌ大塚製薬「あいーと」事業部と知り合い、「酵素均質含浸法」という食品の冷凍加工技術を知る。
「あいーと」の技術は、酵素独特の苦みがなく、お肉も驚くほど柔らかくできる。
これをHANZOYAのシェフたちに伝えたところ、一人が「やりたい!」と興味を持ってくれたことがきっかけになり、フレンチの嚥下食を共同開発することに。
実際に、訪問診療の医師と共に、老人ホームや在宅療養を訪れ、嚥下が困難な方々の食事の場に接し、食事面の問題や緊急時の対応など、現場に即した安全面も学んだ。
更に、老人だけでなく、子どもや若い人で嚥下が不自由な方々にも楽しんでもらえる食事と食環境も課題に掲げ、専門家と勉強中。

被災地支援をきっかけにつながった医師の皆さんと、嚥下食開発チームを発足

 

嚥下食にフレンチのノウハウと文化をつなぎ、「スラージュ」が誕生

これまでの介護食や嚥下食は、安全性や栄養面には配慮されているものの、どうしても「味気がない」「飽きてしまう」印象。
食事は単なる栄養素の摂取ではなく、「香り」「見た目」などが心をも元気にする、そんな役目にフレンチの技法が活かせることを実感。
ムース、ピュレ、ジュレなどのフレンチならではの調理法は、摂食嚥下調整食に適しており、
”キザミ食”を超えた香りと味わいが可能な上に、彩り豊かな盛り付けや香り、音など、美しさを大切にするフレンチの文化で、「五感で楽しめる嚥下食」を実現。
これは嚥下食として特別視するのではなく、フランス料理の延長線として、健常者も誰もがおいしく楽しめる食事、という考えから、「スラージュ」と命名。
安全性や栄養面に配慮するだけでなく、フレンチが持つ美の感性と技法によって生まれた「スラージュ」の魅力は、まさしく「アート&サイエンス」。
これからの介護食の在り方に一石を投じ、家族や友人と皆と同じ場所で同じ食事を楽しめる、という食環境の実現の一つとなっている。

一人一人の嚥下機能に合わせて作る「ムニュ・スラージュ」のコースと、「フェリシテ」(柔らかいケーキ)を、レストランで多くの方に提供してきた実績を持つ。場合により、医師の判断や同席、管理栄養士のサポートなど専門家との連携も構築