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気まぐれ更新 惚れて通えば千里も一里

「ブランマンジェ」は究極のスラージュ

すっかりご無沙汰してしまったこのコラム。言いたいことは沢山あるのですが、あれこれ悩んでいるうちに時が経ってしまい、この間に活動も色々と進みました。

そんななか、先日、NHKの番組『おはよう日本』のコーナーで、私の嚥下フレンチ(スラージュ)への取り組みを取材して頂き、「家庭でも簡単にできる嚥下フレンチ」というリクエストで調理実演をして、ニーズが高まってきていることを実感しました。

そこで、スラージュができる一工夫や、一般の方でも知っておくと便利な料理のマメ知識や裏ワザ、食に関するアレコレをこのコラムから発信していこうと思います。



初回は「ブランマンジェ」。実はNHKの撮影でも紹介用に準備したのですが、生放送の関係で泣く泣くお蔵入りとなってしまいました…。「ブランマンジェ」は究極のスラージュとしてご紹介しようと思います。



「ブランマンマンジェ」はフランス語で「白い(ブラン)」「食べ物(マンジェ)」という意味。基本はアーモンドを牛乳で煮出し漉したところにゼラチンを入れて冷やし固めたデザートで、ソース アングレーズ(カスタードソース)を添えるのが最もオーソドックスです。

フレンチのデザートと言えば、クレームキャラメル(カスタードプリン)やシュークリーム、エクレア、クレームブリュレですが、ブランマンジェは、”ゼラチンを使用する”最もシンプルで基本的なデザートとも言えます。

見た目は言葉どおり白くて、とろんとした食感はヨーグルトやパンナコッタとそっくり。パンナコッタはイタリアンのデザートで、ブランマンジェの基本は<乳製品+ゼラチン>に対して、パンナコッタはリキュール類を加えるのが特徴です。

<乳製品+ゼラチン>に卵を加えると「ババロア」で、更に数種類の食材を組み合わせて作ると「ムース」になります。つまり、ババロアもムースもブランマンジェの応用で作られます。

ブランマンジェは、デザートとしてだけでなく、料理としても楽しめるのがいいところ。 私のおススメは、「胡麻を使ったブランマンジェ」。
・牛乳に10%程の砂糖を加え、煎り胡麻を煮出して(沸かさずに)漉して1%のゼラチンを加え作るとデザートに。
・牛乳に1.5%程の塩と牛乳の20%程の鰹出汁やブイヨンを加え煎り胡麻を煮出して(沸かさずに)漉して1%のゼラチンを加えると料理に。
加える調味料やダシなどでデザートにも料理にもアレンジできます。


ポイントは「ゼラチン1%」!

これ以上多いと市販のゼリーのように角が立ち口の中でバラバラして、くちどけが悪くなります。これは、嚥下機能が弱くなった方には飲み込みにくくなるポイントの一つでもあります。 逆に少ないととろみ感がなくなり、くちどけの楽しさも失われてしまいます。

なんといってもブランマンジェの魅力は、作り方が簡単なうえに、コストもそれほどかからず、くちどけが良い食べやすさ。老若男女、ハンディや病気に関わらず誰もが大好きで食べると思わずほっこり笑顔になってしまう、まさに境界線のない食べ物です。

そしていろんなトッピングで楽しめます。

完成したブランマンジェに色々なソース(カスタード、チョコレートソース、果実ソース、ダシ)などを上からかけると雰囲気が変わり、レパートリーも広がります。ブランマンジェを握り寿司のシャリとすると、上に乗せるネタ(マグロ、イカ、エビなど)を変えれば色々な味が楽しめるように、お好みで色々なトッピングで試してみてください。



ちなみに、これは、塩をきかせた新玉ねぎをブランマンジェの下にしいて、上からなたねオイルをかけ料理風にしてみました。(ヤギ乳と新玉ねぎのブランマンジェ)


☆胡麻のブランマンジェの作り方☆


≪材料≫

  • 牛乳300cc
  • 白ごま(煎り胡麻)20g
  • グラニュー糖30g
  • 粉ゼラチン1%(3.3g)※小さじ半分強

≪作り方≫

  • 深めの鍋に白ごまを入れて火(弱火)にかけて、軽く煎る(30秒程)
  • ① に牛乳を加え再度火(中火)にかけて、沸騰しない程度(80℃位)に温める
  • ②にグラニュー糖と粉ゼラチンを加えて、再度火(弱火)にかけ、グラニュー糖と粉ゼラチンが溶けたら(約30秒程)火を止めてコンロから降ろす
  • ボールに氷と水を入れて、一回り小さなボールを氷の入ったボールの上に乗せておく
  • ④のボールに③を漉し器で漉し入れて粗熱をとり、冷蔵庫で冷やし固まるのを待つ(約2時間)

粗熱をとったブランマンジェをお好みの深めの器に流した後に冷蔵庫で冷やし固めてもよい。


▼調理で気をつけるポイント▼

  • 沸騰させないこと。
  • ナッツ類(胡麻、アーモンド、落花生)はしっかりと香りが出るくらい炒る。ただし焦がしてはダメ。
  • 果実類(苺、バナナなど)は完熟を使い、加熱はしない。
  • ゼラチンが固まらない「たんぱく質分解酵素」を持っている食材(グレープフルーツ、桃、パイナップル、キウイ、メロン、パパイヤ、生姜など)は、コンポートを使用。もしくは、一度加熱(70℃)して酵素の働きを停止(破壊)させた後に冷やして作る。
  • ゼラチン類は 油分を嫌うので、 調理器具は洗剤で油分を確実に洗い取り除いておく。



2025年問題を食べました

今回は、食の道ツナギストのサポートスタッフ・柏木から報告いたします。
去る6月21日、食の道ツナギスト加藤の主催により、『2025年問題を食べる~介護食とフランス料理の境界線』と題して、嚥下フレンチの新作メニューの披露を兼ねて、医療関係の方々と超高齢化社会の課題についての意見交換会を開催しました。

普通にフランス料理を作れば、嚥下食にもなる!
ピューレ、ジュレ、ムースなどのフレンチの調理法は、嚥下食に適しているため、ことさらに「嚥下食」として線引きしなくても、フレンチの延長線上としてできる。
これがフレンチシェフとして嚥下食を開発してきた加藤の考えですが、今回の実食をとおして、皆様も実感することができたようで、驚きと感動の声を多数いただきました。



嚥下食と言えども、盛り付けは普通のフレンチ同様華やかで見て楽しく、色彩豊かなソースからは、隠れた食材の香りが刺激をくれます。
盛り付けも見た目も、普通のフレンチと変わらず、お肉もお魚もあります。

ただ少し違うのは、ナイフ&フォークを使わず、片手でスプーンですべて食べられること。
お肉もステーキのような形で出てきても、スプーンで崩れ、口の中でつぶれてくれるし、一見お皿の上では硬そうに見えても、ふわりとすくえてしまう不思議さ。
噛み応えや食感で変化がつけにくい分、単調にならないよう、香りのインパクトでメリハリをつけています。



これらの工夫はすべてフレンチの調理法で実現できるので、嚥下食ではなくて「フランス料理」なんですね。
健常者が食しても、違和感がないどころか、おいしく味わえて、嚥下食を食べていることはすっかり忘れてしまうほど。スタッフの私も驚きです。

もし何も言われずにこの料理を食べたら、嚥下食とは思われないかもしれません。
加藤の嚥下フレンチは、介助する家族や友人など健常者も一緒に同じ食事ができることが強み。
フランス料理には疎い私ですが、フレンチのすばらしい可能性に改めて開眼しました!

加藤は、今、画期的な商品を妄想中。(ほぼ実現ずみであとは仕上げ!)
そして「嚥下食」という言葉の響きも、なんだか印象が暗いので、「スラージュ」という名前で提供していきたいと検討中です。
(スラージュとは、フランス語で優しい、ホッとする。ヒンドゥー語で太陽という意味です)

摂食嚥下に障害のある方にとっては、もちろん医師や専門家によるサポートなど安全面をクリアしたうえで、「ちょっと頑張ってあれを食べてみたい」と思える食事や食環境も活力の源だと思います。

今後の加藤の「スラージュ」にご期待ください!




「目に見えない力をおろそかにしてはいけない」

僕がずっと懸念していた、物流業界と消費者との意識格差問題。
日本の物流の技術・サービスのすばらしさは当たり前ではない、消費者はその価値を知り、正当な対価を払うか、もっと効率的な方法を考えるべきだ、と以前から僕は公言していました。先日、とうとう現場の人たちから悲鳴が上がり、料金や仕組みを見直すことになったのは当然だと思います。

今は、クリック一つで買い物ができ、翌日には(当日でも)手元に届く、しかも送料無料!僕たちは、そんな便利さにマヒし、甘え過ぎているのではないでしょうか。

例えば、シェフという立場で言えば、京都のマツタケやタケノコを横浜から自分で獲りに行ったら、いくらかかるでしょうか!? 交通費だけでなく、農家さんとの待ち合わせ時間、採取して梱包する手間、冷やした状態で運ぶ労力…それらを考えたら、送料無料なんてあり得ない!
おなじみのレタスやキャベツなどの高原野菜は、収穫後に熱を持ち常温ではすぐに腐ってしまうため予冷庫で一度冷やしてから。ナスやキュウリなど成りもの野菜の多くは、ビニール袋や発泡に梱包することで、あえて呼吸させない方法で運ばれてきます。特にイチゴはとても繊細なので、摘むタイミングや、傷一つつけないための工夫は大変なもの。これらは絶妙な鮮度を保つために、物流業界と産地が工夫した技術です。
そんなキメ細かい手間をかけ遠くからすぐに届く、そのサービス価値を知れば、送料が高い(売価が高い)、とか、送料無料にして、とは言えなくなるでしょう。

実は、僕は「産直」はしません。
ルール上(JAに入っていない農家の荷は市場に出ない)市場に出していない食材も、なるべく市場に荷受けを頼んでいます。
産直はいかにも良さそうに感じますが、一人一人が一つずつの荷物を色々な所から個別に送ってもらおうとすれば、荷物と手間とCO2は増えるばかり。
僕はもっと既存のインフラを活用すべきだと思っています。僕自身は、各産地から宅急便を使って直送するのではなく、口銭を払っている市場に荷受けしてもらい1か所に集め、自分で受け取りに行っています。(市場の仕組みは複雑なのでここでは省略)。もちろん鮮度に支障はありません。

最近ようやく始まっていますが、過疎地域の空席のバスや電車など、既にいつも動いているものや既存のインフラを活用する考え方はもっと必要だと思います。

便利さや心地よさは、目に見えない力に支えられています。それが「無料」「格安」なのは、誰かが犠牲になっているのでは?と想像してほしい。自分さえ良ければいい、という我欲を脱し、目に見えない力こそおろそかにせず、価値に感謝と評価をしていきましょう!




「食の道ツナギスト始めます」

フランス料理のシェフになって28年間、沢山の同志や先輩、業者様、生産者様そしてお客様に支えられ、料理の道を進んできました。
僕がよく伺う食産地では、昨今、巷でも報告されているような問題が山積している事実を目の当たりにしています。
しかし、こと一次産品を生産されている方々の生産物に対する思いや技術は、数年単位で育んできたことではなく、世代を超えて歴々と継承してきたある種の文化であることも実感しています。

一方、大きな技術革新を経て工業的(安定的かつ必要とされている栄養素)に特化した生産物の生産も可能になりました。この高設栽培や水耕栽培、バイオ技術などは、土壌の条件を求めず、人間の都合のよい環境での栽培が可能です。
こうした技術革新は、未来を創造し、決して未来を悪くするばかりではないでしょう。LED植物生育ライトでの水耕栽培の葉菜類を食べさせていただいた個人的な感想としても、葉は柔らかいし、苦みやエグミ等は非常に少なくて食べやすく、更に自然災害にも影響を受けにくいメリットもあり、未来の農業の姿を想像させます。
ただ、やはり気になるのは、路地で栽培されている葉菜類と比較すると、どうしても複雑味には欠けてしまうこと。たとえば、苺の高設水耕栽培においては、生産性に優れ、生食用としての品質は一般家庭向きではあっても、お菓子屋さんや料理店で扱うには、どうしても複雑味に欠けてしまい、加工には不向きな感が僕は否めません。

現代的な生産方法を否定するわけではありませんが、土耕栽培で生産された食べ物には、数十年数百年という時間をかけて「自然から学び培った味わい」が宿っていると感じるのは僕だけでしょうか。
食品は、確かにまぎれもない経済生産物で、生産コストと経済利益還元を無視して作れるものでもありません。だからと言って、自然の摂理を軽視して食品が生産され、その食品を食した人間の健康や未来が担保されるかは疑問です。

地球誕生以来、生命は常に自然の流れに逆らえず現代になり、この自然の流れは未来も変えらないはずです。
人工的な原子力エネルギーは、ひとたび間違えると人間の力でも自然の力でも取り返しのつかない事態を招きます。これは東日本大震災で被災した福島県第一原発の事故が実証しています。人が自然に対して行えるのは、自然に従い、雨が降ったら傘をさすとか、冬が来たら暖を取れる服を着る範囲。これを、雨を降らさない!とか、冬にさせない!とかはできないし、決して許されないことでしょう。

もちろん、科学者が自然の力に挑むことにロマンを抱き、日夜研究されている結果、開発された技術により、私たちが恩恵にあずかっていることも多いのも確かです。
それを重々承知の上で、あえて言いたい。
日ごろ私たちが口にしている野菜、水産物、畜産物にも、今や、遺伝子組み換え、F1種(一代交配種・雑種強勢)、農薬、化学肥料、強制育成、様々な技術が施されています。
こうした技術をよくよく考えてみると、少し人間の強欲を僕は感じてしまいます。
果たして、我々はどう健康を担保したいと願っているのでしょうか?

そして「フード・マイレージ」の考え方。エコロジーの観点からは、輸送に伴う二酸化炭素の排出量に着目した考え方は確かに正しいと思います。
しかし、美味しい食材は近くの地元だけで生産されているわけではありませんし、人と物の移動インフラや、鮮度保持の技術が整った現代において、鮮度という観点で食材を見ると、疑問がわきます。必ずしも輸送距離が長いことが悪とは言えません。
むしろ、大都市で地産地消をやれば、食材の総量を投じても、消費人口の胃袋を満たすことは到底できません。そうなると、大きな消費人口を抱えている都市が言う地産地消とは、餓死宣言とも言えますし、経済的には地方を餓死させることにもなりかねないと思います。
はたして、フードマイレージの考え方は正しいのでしょうか?

日本各地を巡り、こんなふうに様々な矛盾を感じるようになりました。
そんな理由で、食を自分なりの視点から感じた、全く身勝手な考えの元に、「食の道ツナギスト」として、身勝手極まりない活動をすることにしたわけです。

もし、皆さまがこのHPを読み なるほどね!などと思っていただけたら、引き続き、このHPを覗きに来てください。
また、更に共感してくださる方がいるのならば、是非とも一緒になって小さな疑問を世の中に投げかけてみませんか。
協働してみたいという同志・仲間を大募集中です!